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建替え調査

08年11月、内閣府、法務省、国土交通省は共同で「分譲マンションの建替え等の検討状況に関するアンケート結果」を発表しました。老朽化マンション等の建て替え実態などを調査したものです。

 管理組合にとって、建て替えを具体的に進めるにあたっての事実上の問題は

現在のマンションが容積率オーバーなどで既存不適格 23.5%
建て替え検討費用の確保が難しかった 14.7%
修繕・改修と建て替えのどちらが適切か分からなかった 14.7%


 合意形成上の問題は

高齢居住者や低所得者など個別の事情への対応が難しかった 22.1%
建て替え派と修繕・改修派で意見が対立した 11.8%


 建て替えを円滑に進めるために必要なこととしては

建築規制が緩和される仕組み 42.6%
公的な助成(事業費など) 39.7%
公的な支援(相談窓口など 23.5%
仮住居に関する公的なあっせんの仕組み 22.1%

 あわせて、81.8%が建て替え決議があれば、借家権の消滅請求ができる制度があってもよいと回答したのです。

建て替えの現状

国土交通省の推計によると、築30年のマンションは2013年年時点で、129万戸。2020年に200万戸を超え、さらに2033年には447万戸に達するのです。

では、建て替えが終わったマンションはいかほどなのか。
2016年4月時点で、たったの
227件です。1件の建て替え前の住戸数を100戸と仮定しても、2万戸程度なのです。その中でマンション建て替え円滑化法を利用して建て替えた事例は、72件でした。

この中には、阪神大震災の被災マンションの108件は含まれていません。

国の思惑通りにはならず、国交省は理由として〈1〉住民の合意形成が難しく、円滑化法とセットとなる区分所有法が定める条件を超えられない〈2〉建て替え費用が多額で都市部などの好立地を除いては難しいことを挙げています。

しかも、合意が得られるまでの時間がとても長くかかり、それまでにも
老朽化部分は補修を施さなくてはならず、出費が抑えられません。

開発業者の調査による、建て替えを決意するきっかけです

1  給排水管等の老朽化  36%
2  バリアフリー化の必要性  19%
3  耐震性への不安  17%
4  外壁など、建物の老朽化  17%
5  その他  11%


建て替え方法

建て替えの方法として、3つが考えられます

A  全員合意で決議  事業者と個別契約で等価交換
B  5分の4以上で決議  反対者を排除して全員合意で等価交換
C  5分の4以上で決議  建て替え円滑化法を適用し組合方式で権利変換


そして一人もいなくなった

1956年に竣工した大阪吹田市の旧公団が分譲した全15戸のマンションがありました。ただ、それまでに大規模修繕や給排水のメンテナンスは行われないまま。

そのため経年劣化が進み、2004年に建て替え計画の話が上がり、そして2007年に
管理組合が動き出し、2008年に建て替え方針を決議しました。そして2010年には、業者が事業協力者として本格的に、建て替えの動きが進みました。

近隣では、建て替えや大規模修繕がすすむマンションに影響されながら、全員が焦りを感じていたのです。

区分所有者は、法人、個人と合わせて、
7人と少なかったので、全員合意が容易に働きました。

ところが建て替えとなると、各自の持ち分の評価格が低く、
還元率は70%となり、建て替え後に自分達が戻るには、1000万円程必要となりました。

建て替え工事中の仮住まい費用も、300〜400万円程必要になり、近隣の中古マンションを購入した方が良いと考えるようになりました。

結果、2010年
区分所有関係を解消して、敷地を一括売却する事を決め、事業者と売買契約を締結したのです。

建て替え後、区分所有者は
誰ももどりませんでした。

地震からの再建

阪神大震災で全半壊した兵庫県内172件の分譲マンションのうち、建て替えか補修かで住民の意見が割れ、地価下落に伴って計画見直しも迫られた結果、再建を選んだ最後の1棟(旧宝塚第3コーポラス)が10年1月に完成。

住民の多くは建て替えを希望。ただ、高齢者の中には「ローンが組めない。再建しても戻れない」という声もあり、議論の末、97年11月、区分所有法に基づく建て替えを決議。このときに意向を聞くと、大半が再入居を希望しました。

しかし、建て替えに強く反対した一部住民が決議無効を求めて
提訴し、再建が遠のきました。入居希望者は、1審が訴えを棄却した2001年11月には全体の約7割に、「決議は有効」とする2審判決が確定した04年4月には約2割にと、どんどん減る一方。月日がたち、子供が独立するなど、多くの家族の生活が変わっていきました。

その後も、地価下落の影響で再建計画を見直さざるをえなくなり、07年7月、ようやく建て替えを再決議。新マンションの総事業費は
約17億円で5階建てで、戸数は73。しかし旧マンションから移り住むのは、1家族だけとの結果になったのです。
 
もう一例として、六甲山麓の高台に立つ12階建ての「グランドパレス高羽」(178戸)があります。

当初は補修による復旧を考え、建設会社に依頼をすると、
1戸当たり約480万円の予算が提示されました。しかし途中から「建替え案」が浮上しました。

採決の結果、5分の4をわずかに上回る数字で、
建替え議案が可決。補修派はこれに反発して提訴しましたが、2003年、補修派は最高裁で敗訴し、建替え決議の有効性が確定したのです。

2008年9月、兵庫県住宅供給公社が分譲する「グレイスビュー六甲山手」(170戸)として再建工事が完了。阪神大震災以前に入居していた178戸のうち、マンションの権利を持ち続けたのは36戸に過ぎなかったのです。

結局、1995年1月に被災してから、最高裁で建替え決議が確定するまで8年、再建工事が完了するまで
13年かかりました。

老朽化マンション対策会議

10年6月、老朽化したマンション再生の課題解決に向けた諸制度の見直しや新しい施策などを提言していくことを目的とした「老朽化マンション対策会議」が、都内で設立総会を開き、発足しました。

学識者、法務専門家、マンション管理組合、ディベロッパー、建設会社、コンサルタントなどが設立発起人となり、賛同 する全国のマンション管理組合など約100人の会員で始動。 会長に椎名武雄・
日本IBM名誉相談役が就任。

対策会議が主な検討課題としているのは

建て替え、大規模改修促進のための制度改正
事業実現のための資金調達方法の検討
区分所有者 サイドに立った建て替え・改修事業推進体制

総会では「制度 面、法律面の対応は可能。区分所有法、マンション建替え円滑化法と税制を工夫することで実現できる。こうした投資を促進することで景気の好循環も期待でき る。」と述べていますが、(住宅新報)果たして現実性はいかほどなのか。

団地の建替え

10年12月、東京都は多摩ニュータウンの「諏訪2丁目住宅」の建替事業で、建替組合の設立を認可しました。多摩ニュータウンの分譲集合住宅として初めて住民が建て替えを決議した住宅であり、総戸数640戸で、全国でも最大規模の一括建て替えとなります。

諏訪2丁目住宅は多摩ニュータウン内において最も早い1971年(昭和46年)に入居を開始した団地です。しかし、竣工から40年、外壁はひび割れ、排水管は破損が目立ち、また、
エレベーターがないことが高齢の居住者を苦しめたのです。

また、耐震性への不安などが問題となり、2010年3月に開いた臨時住民総会で、高層マンション7棟への一括建て替えを9割超の賛成で決議。
「マンション建替え円滑化法」に基づく事業で、建替組合設立後、権利変換などを経て2011年7月に着工。


次の例です。1964年に旧・日本住宅公団が分譲を開始し、翌65年に竣工した東京都世田谷区の
「桜上水団地」。10年12月、東京都は「マンション建替えの円滑化等に関する法律」(円滑化法)に基づき、都内21件目と なるマンション建替組合「桜上水団地マンション建替組合」の設立を認可しました。2009年9月に建替決議が成立し、10年2月に認可申請を行なっていました。都内最大規模の建替え事業になります。

築34年を迎えた1998年ごろから建て替え話が持ち上がり、具体化したのは06年。分譲住宅の建て替えは区分所有法により、全区分所有者の
5分の4の賛成が必要です。

団地の全棟を一括して建て替える場合は、さらに各棟の3分の2の賛成が必要となります。桜上水団地では過去2回、5分の4は上回るものの各棟の合意がそろわず否決が続き、今回の3回目の決議では各棟でも3分の2が賛成。
決議成立後、建替えを進めた管理組合は、建替えに反対の74件、64戸に売り渡し請求の催告書を送付

そして決議成立に疑問を持つ反対者14人が東京都に対し建替え認可取り消し・無効訴訟を起こし、裁判は継続中です。
国土交通省の推計によれば、全国の分譲マンションは平成20年末で545万戸。このうち建て替えの検討開始期といわれる築30年を経過するマンションは2011年に
100万戸を超えるのです。

マンション法の改正

2016年、6月に都市再開発法を改正し、これまで所有者の5分の4の同意がなければ進められなかった建て替えを、3分の2以上の同意で進められるように改定。

というのも、築40年以上の分譲マンションは現在
56万戸。10年後には162万戸、20年後には316万戸に増えます。ところが、この40年間に分譲マンションで建て替えられたのはわずか227件で、老朽マンションの2%にも満たないのです。

現在全国各地の老朽化マンションにおいては、今までに建て替えか修繕かで何年もの間話し合いがもたれていましたが、法改正にともない、かえって推進派と反対派の対立が激化し、住民代表だけの議論ではなく、全住民の意見を汲み取り、白紙の状態から検討し直すことに向かうことが多くなると予想されます。

国は建て替えが進まないので応援しようということなのでしようが、実は建て替えが可能な団地やマンションはそんなに多くなくむしろ少ないのです。現在の建物の、
容積率や建蔽率に余裕がないとむずかしいのです。

また、マンション管理規約の改正により、一層の混乱が予想されます。それは「
議決権割合」です。

総会での議決に対して、部屋の価値により、票数の割り当てが決まるのです。要するに、
金持ち有利な法改正になってしまっているのです。

この、数字をいじっただけの法改正では、市場原理主義に基づいた安直な経済的弱者切り捨てと受け取られても、仕方のない事になります。



続きは マンショントラブル マンションの騒音

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